***


……待って。待って。

理解が出来ない。


だけれど、視界は見慣れた光景。


ここで、寝ちゃったんだよなー………じゃないっ!!!!


……なんで、怜さんがいないの?!

そして、私は、助手席に座ってるんだけど!?


立場上……私は後ろの席だと思うけど……?

私の心の中が大騒ぎ。


久しぶりのブーンッ!!というエンジン音を聞いて、車が……走っている。


もう、何がなんだかわからない。

私の頭の中に『諦め』という言葉、2文字が、染みついている。

久しぶりに頭が追いつかなくなって……いないわ…今日の…朝もそうだよ……。


この車は……忘れさられる車?とか?


そんな考えじゃなくて……っ!!

私は右、左へと首を振って、現実へ戻って来る。
そして、左を見ると……なんと……!!


国民的俳優の王政義數がいるではありませんか!!!


すごいですねー!!

女の子たちはキャーキャーでしょうねー!!

そうですねーー!!


……なんて、他人事じゃないんですよ!!!


いるんですよ!!!王政義數様という名の魔王様が座っているんです!!!

……わたくし、下僕or奴隷の人が隣にいてもよろしいのでしょうか!!?

……よろしくないですよね。

うん。うん。

じゃなくてー!!!……なんで、私と王政さん2人だけなんですか?

車の中、2人。

何か始まりそうだけど……。

……現実は始まらないよね!!
そう心に聞かせて、私は前を見る。


・・・。


沈黙。


何分か経って分かった。


喋らないと、空気がおぼつかない!!

空気が重いし、気まずいし……!


な、何を……喋ればい、いいかな!?

頭の中がさっきのボーッとしているのと逆で、頭、フル回転。


「げ、元気ですか……?」

いやダメだ。
それだと、話が終わっちゃう。

「夕日が綺麗ですね……っ?」

とか?

うーん。微妙だ。

目を瞑って、考えている内に、私は……眠ってしまっていた。



「無防備すぎだよ……楓」

なんて、言う声は“また”、夢だと思い、気にしなかった。

そう。“また”。