【side:魔王様(王政義數)】
……っ。楓が……泣いてる……?
……どうした俺。動けよ。体。
全然体が動かねえ。
楓が泣いてる。
助けなきゃ。
……それなのに、体が動かねえのに、なんだよ。
「……っ助けて……っ」
その顔を俺は見たとき、俺は2つの感情が心の中に湧いた。
楓を泣かせた奴を怒りたいのと、
この楓の泣いた顔を誰にも見せたくなかった。
「……だいじょ、ぶか?」
震えた声で俺は楓を訪ねる。
「……っ!!」
その声にビクッとしたのか、また強く両手を掴む楓。
俺はどうすればいい?
楓を……抱きしめられるのか?
『結婚破棄してくださいっ!!』
その声は今にも俺の頭の中に永久に再生して行く声。
あの顔は俺が嫌いだって顔だった。
……俺と……そんなに……って、俺は楓のキスを奪ったんだから。
俺なんか、嫌いだよな。



