「はい。楓さーん。笑ってー!」


……違う。違う。

こんなことにはならなかった。


先輩のお誘いを断った方が良かった。

今は、夢だと言ってくれ……!!

私は、口角を上げるけれども、引き攣りながらも、カメラを見ていた。


「もっとーもっとー!!」


今の状況。

カメラが前にあり、その後ろに、スタッフさんたちが、私の右と左にいる人たちの姿を見て、瞳がハートになっている。

だけれど、それは、私は全然気づかなかくて。

なぜかというと、私は可愛いドレスを来て、ドレス丈が、膝より上で、高級そうな椅子に座り、左隣にも、右隣にも、芸能界では超有名で、顔が王子様の人がいる。


そう。それはーーーーーーーーーーーー。



『こういう表紙です!』

話は、王政義數と会ったときまで遡る。


王政義數と会い、スタッフさんに「揃いましたので、ご説明させていただきます」と言って、私たちをテーブル、椅子があるところへ案内していた。

そして、私たちが椅子に座り、スタッフさんが薄く紙が重なっているのを、私たちに見せていた。


『えー。今日は、お忙しいところお集まりいただきありがとうございます。えー紹介させていただきます、神田と申します』

私はペコっと頭を下げる。

そう頭を下げたとき。


ここに、私=一般人がいていいのか?!

と思った。

だが、そんなことを思っている暇はない。

『……えー。これが、雑誌の表紙を飾ります。これが女性のデザインで、こちらが、王政義數さんとAoBaさんのデザインです。テーマは、王子様とお姫様……まぁシンデレラみたいな感じです』

………。

何も言えない。

口は閉じるし、喉から声が出ない。

私はもう、芸能界には素人目線なので、なんでもいい。

と、というか、私、こんな短いドレスを着るんだ……。

そう。私が着るであろう、ドレスのデザインは、ドレス丈が短く、水色のドレスで。
かっこいい、赤のアイメイクに、自然をイメージした、緑色のアクセントがある。


そして……芸能界の王子様たちは。


『俺……王子様。嬉しいです』

『俺は仕事なので……良いです』

何も異論はないようだが。

私の隣に座っている、人は………。

私の腰を引っ張って、その人の近くにやろうとする人と。
私の手を……ぎゅっと握る人がいた。


……あの、私の体勢は考えないんですか?

私の腰を引っ張る先輩と……ぎゅっと手を握っている魔王様。

な、なんだ?この私の隣にいる人たちのピリピリした空気。

……だって、なんかスタッフさんが、「これで大丈夫ですか?」なんて言って、話を持ちかけようとしたら。


「……楓、膝より上のドレス着れるのか?」

大丈夫ですよ。
着れます。着れます。

なんて思いながら、魔王様にコクっと頷く。

「ふうん。そうか」なんて頷きながら、私の手をぎゅっと強く握った。

だけれど。

私は、先輩の言葉が気になりすぎて。



「……可愛いね。楓のドレスは」

ベタ褒めという言葉がぴったりだろう。


はい。気になりますよね?

『オレンジジュース持ってきて』

なんて言う奴(先輩)が。

『可愛い。』なんて言いますか?


「おい。お前は楓の可愛さを分かってねえだろ」

「分かってるよ……?」


ニコニコ黒い笑顔で笑う者同士、私を挟みながら、ピリピリの空気を変えてくる。


「おい。AoBa。なんで、楓の腰なんか引っ張んてんだよ」

「……え?何?話が聞こえてないんだけど。…国民的俳優の王子様?」

と言った途端に、魔王様は眉をピクっと動かして。

そして、それに気づいた、先輩も、眉をピクっと動かして。


「「あ゛ぁ゛?」」


……もう。怖いです。


通称(私の中での)魔王様と、王様は……怖い。


「あ、あのー……「「うるせえ」」

スタッフさんも言葉(声)を震えながら言うけれど、魔王様と先輩の言葉で、言葉を失う。

お、オーラが……。

「あ、あのー。早く……やって終わらせましょう」

「……楓。ありがとな。この化けの猫を鎮めさしてくれて」

「楓、ありがとう。この国民的魔王様を懲らしめてくれて」

「「あ゛ぁ゛?」」

「喧嘩するほど仲がいいですねっ!!」

私が、喧嘩を治めようとした結果。

「まぁ良い。楓に言われるならまだしも、AoBa……お前、今俺のこと、なんて言った?」

「えー。何も言ってないよー。」

なんて言いながら、ファッションを撮るところへ、私の腕を片方は先輩、片方は魔王様が掴んで。

「「……行くぞ(よ)」」
と偶然にも、声が重なっていた。

もう……何がなんだか……。


助けて。

教えて……おじいちゃん?