「いらっしゃいませ〜。」

そんな女の人の声が、綺麗で、華奢な服が(はし)に並んでいるところの真ん中から聞こえる。
その声が聞こえて、私はビクッと震えて、先輩の背中に隠れる。

「?」
と首を傾げながら、先輩は私を一瞬見て、店の服を見ている。

……嘘でしょ。

ここは……世界的有名ファッションブランドの服の店だよ?
そう世界的ファッションブランド=《AbiChi–アビチ–》

名前の由来は知らないけれど、このブランドは、『誰でも着れる、変な世界的のファッション』というモットーを元に、服全般や靴を作っている。カッコいい服もあり、可愛い服もある。

アイドルや芸能人がライブ、バラエティのときの服がこのブランドだ。

でも、このブランドの服は高いのだ。

『誰でも着れる』をモットーの中に入っているのに、高いのって、モットーを破ってんじゃん。
と思うでしょう。

だけれど、ファストファッション店で限定品として売っていたりしている。
そして、なぜかスーパーのところにもあり、SNSで反響がすごかったらしい。

なんで、こんなに知っているかって?


全部、灯の情報ですっ!

……って、誰に話してんだ!!


「……楓?大丈夫?」

「はいっ!」
即座に反応して、私は先輩に返答をする。

「……で、どうすればいい?」

まぁそうですよね。


「うーん。先輩は地毛が栗色なのでー……服は、黒か白がいいかもしれません。」

まぁベタだよね。

私から見ても、先輩の服装がダサい。

誰が選んだの?と思ったけど、もう心の中では分かっている。

ダサい服を選んだのは……、先輩だった。

まぁそうですよね?
と思ったけど……今は、先輩の服選び!!


「……んで、靴はー……。青が良いですね!……だからー……そのままで!」

「ん。分かった。」

先輩は、私が選んだ服を何にも不満を言わずにすぐに頷いてくれる。

私で良いのかな?と思ったけれど、先輩の顔は真剣だったし。
そして、少し楽しそうな顔だったし。

……この疑問の気持ちは落ち着いて、消えて行った。