「そうだよ」


そう言って顔をあげた先にあった世界は、涙のせいできらきらと輝いて見えた。

膜が張っていても、それはわたしがいた世界よりもずっと広く、色鮮やかに感じて。



「わ、たしは……わたしは、もう……」


透明の薄い壁がナナちゃんたちの顔を歪ませていく。

だけど絶対に下は向かない。

どれだけ不格好でも、情けなくても。

いま言わなくちゃ、わたしは一生、このままだ。





「ナナちゃんたちと一緒にいたくない」




このまま友だちがひとりもできなかったらどうしよう。

そんなことばかりを考えながらずっと俯いていたわたしに、ナナちゃんはすごく自然に話しかけてくれた。

そして言ってくれたんだ、友だちになろう、と。


いきなり話しかけられて、しかも今まで関わったこともないような綺麗な女の子たちで、第一声が失礼とも言えなくもなかったけれど。


わたしはナナちゃんに声をかけられたことに後悔はしていない。


あの日、うんって言ったことも。

いままでナナちゃんたちと友だちでいたことも。

わたしは後悔はしたくなかった。絶対に。


だから────



「……ありがとう。わたしと、友だちになってくれて……あの日、声をかけてくれて、ありがとう……ナナちゃん、瑠衣ちゃん……」

「……あまり。私は──」


ナナちゃんが何かを言おうとした。

だけどそのタイミングで、わたしの我慢も限界を迎えてしまったらしい。

縁いっぱいまで張っていた涙がぽろりとこぼれ落ちそうになったとき、わたしの前に大きな背中が広がった。