「ねえ、あまり」
ナナちゃんが穏やかにわたしの名前を呼んだ。
そこに座ってるのは、“いつもの”ナナちゃんだった。
「それってつまり、どういうこと?」
「っ……」
「あまりは、私たちと、友だちをやめたいってこと?」
小首をかしげるその艶やかな仕草には、毒が含まれていた。
半年程度とはいえずっと一緒にいたからこそわかる、伝わってしまう、微量の毒を感じ取った。
怖かった。
こうして面と向かって言われることも、独りになってしまうかもしれないことも、じわじわと体内に巡る毒、いままでのこと、これからのこと。
下を向きそうになる。
スカートをぎゅっと握りしめる。
手汗がひどい。息が荒くなる。
酸素が薄くなったように、わたしは何度も浅い呼吸を繰り返した。
いつも我慢してばかりだった。
思考ばかりに重きを置いて、感情を疎かにしていた。
自分の心を抑圧して、感情を押し殺して、それを繰り返しているうちに、あるときふとわからなくなってしまったのだ。
自分自身の気持ちが、わからなくなった。
────自分の気持ちを無視するな。勿体ねえことすんじゃねえ。
”彼”がいなかったら、きっとわたしは、もっと駄目になっていた。



