ブルー・ロマン・アイロニー



「アンドロイドなんていらないって顔してたよね。それなのに、いきなりこんなアンドロイド侍らせちゃってさ。一体どういう心変わりがあったの?」

「ナナ、もういいじゃん……」


瑠衣ちゃんがわたしにキツいことを言って、ナナちゃんがそれを宥める。

それがいつもの光景。

だけどこのときばかりは、その立場が逆転していた。


瑠衣ちゃんはわたしを庇うというよりは、ナナちゃんの突然の変わりように戸惑っているんだと思う。

ひかえめに袖を引っ張られてもなお、ナナちゃんはわたしのことだけを見据えていた。

なにがそんなに彼女を駆り立てているのか、なにが気に障ったのか、わからなかった。



「アンドロイドと人間の馴れ合いなんて可笑しいよ、気持ち悪いってみんなに言われるよ」


気持ち悪い。

さらりと吐かれた毒のような言葉に胸がじわり、痛くなる。


ナナちゃんは止まらない。

いつもは静かに凪いでいる瞳が、大きく揺れていた。



「ああ……もしかして。急に髪を切ってきたのも、そのアンドロイドのため?ひょっとして好きになっちゃったの?」

「……え」


なにを言われたのかわからなかった。



知ってる?あまり。

形のいい唇がそんなふうに動いた。




「人間とアンドロイドの恋なんて許されないんだよ」




ナナちゃんがじっとわたしの目を見つめる。

ナナちゃんの目にはわたしが映り込んでいた。

きっとわたしの目にもナナちゃんが映り込んでいるんだろう。