ブルー・ロマン・アイロニー



「ごめんね、あまり。私も瑠衣も寒いの苦手だから」


ううん、寒いなか飲み物を買いに行くことはべつに苦じゃない。

お金のことだって、あとで返してくれさえすればいい。


だけど、ねえ。たまには一緒についてきてよ。


そのひとことが言えたらどれだけ楽だっただろう。

こういうとき、わたしは決まって心を──感情を殺す。


わかった、行ってくるね、と。

机の上に散らばったお金を拾い集めて立ちあがったとき。

ナナちゃんがひとりごとでも言うようにつぶやいた。



「また連れてきたんだ」


視線の先を追う。

そこにいたのは、わたしの後ろに立っていたアンドロイドだった。



「護衛用でしょ?この学校ってそんなに治安悪くないし、わざわざ連れてこなくてもいいんじゃない?」


それはランドセルの色はこれがいいのだと言って聞かない子供を、やさしく、だけどしっかりと諭す母親ような口調だった。



「そう、だね。たしかにそうだけど、」


ちらりとアンドロイドを見やると、向こうもまた、わたしを見ていた。

わたしがなんて答えるのかを待っているようにも見えるし、ただ眺めているだけのようにも見える。


わたしは視線をアンドロイドからナナちゃんに移して、でも、と言った。



「家にいるときより、学校にいるほうが楽しそうだから」


ナナちゃんなら、そっか、と言ってくれるだろうと心のどこかで思っていた。

あまりは優しいね、って。

だけどわたしに降りそそいできたのは、まるで氷のようなひとことだった。




「それ本気で言ってるの?」