ブルー・ロマン・アイロニー



やっぱりわたしの入る隙間はどこにもないな、と思いながらふたりのアンドロイドに目を向ける。

ナナちゃんのアズラと、瑠衣ちゃんのセト。

ふたりが会話をするところを見たことがない。

基本的にアンドロイド同士が会話をすることはなかった。

馴れ合う必要がないからだろう。


わたしの後ろで暇そうに立っているアンドロイドも、好奇心旺盛なくせしてアンドロイドには話しかけようとはしない。

不思議だと思ったし、そんなアンドロイドの距離感を少しうらやましくも思った。



「ちょっと、藤白ってば。聞いてんの?」

「え、あっ……な、なに?」


肩を強く揺すられてはっと我に返った。

瑠衣ちゃんがこちらを睨みつけていた。

いつもナナちゃんに向けているまなざしとは大違いだ。



「だから飲み物。下行って買ってきて」

「飲み物……」

「あたしがコンポタで、ナナがココア」


放り投げるようにお金を渡された。

ちゃりちゃりんと机の上にころがった硬貨は、どう考えても枚数が足りない。