ブルー・ロマン・アイロニー



「お前だけは、お前を認めてやれ。自分を否定されたって、いつも俺にしてるみたいに一蹴してやればいいんだ。うるせえ自分はそうは思わない、ってな」


そう言ってから、自分でも味見をするようにお粥を食べたアンドロイドは、ぺろりと唇を舐めたあと「ん、ちょいと薄味すぎたか」とつぶやいた。



「そんなことない」

「あァん?」

「……おいしいよ」

「じゃあ延長するか?」


きっと契約期間のことだ。

わたしだって忘れていたわけじゃない。


12月24日、クリスマスイヴ。

わたしとこのアンドロイドが契約してから明日で約束の一ヶ月だった。



「決めたよ、わたし」

「お」

「明日は学校に行く」

「なんだ」


そっちか、と思わずといったようにぼやいたアンドロイドは、すぐに「いやなんだってこともないが」と言い直す。



「じゃあ明日は俺が起こしてやる」

「え」

「俺という存在がいるってのに、いままで他の機器でアラームかけてた罪は重いぜ?」

「……信用できるの?それ」


人間でいうとちょうど心臓がある位置をどんと叩いたアンドロイドは、胸を張って得意げに口角を上げた。



「当たり前よ!なんたって俺は高性能のパーフェクトなプレミアム個体だからな!」


アラーム機能くらい格安のアンドロイドにだって搭載されている。

そこまで胸を張ることでもないし、いまのところプレミアムな要素は見当たらない。


なんだかおかしくなって、わたしもつられて笑ってしまった。

泣きながら笑ったから、きっと不格好になったけれど。誰も見ていないから。……アンドロイド以外。


だからもう少し、心のままに泣いてしまおう。