ブルー・ロマン・アイロニー



ひさしぶりに口にしたご飯はわたしの好物でもなければ、自分で作ったものでもなかった。

味もうすいし、ちょっとぬるい。



「泣けよ。誰も見てねえから。思う存分、泣いちまえ」


餌付けでもするような手つきはやっぱり雑で。

わたしが作ったほうがずっとおいしくなるはずで。



「泣いたら腹が減る。そしたら食え。なんでもいいから腹に入れろ」


もっと、おいしくなるはずで。


だけど────





「“生きる”ってのは、そういうことなんだよ」



いまわたしが食べているお粥は、ここ数年でいちばんあたたかい味がした。



「っ……ぅ、」


アンドロイドのくせにという言葉は、もう出なかった。

その代わり、ぽろりとこぼれ落ちたのは透明な雫。

わたしの目から生まれるそれは、次々とベッドに吸いこまれていく。


涙を流したのは一体いつぶりだろう。

てっきり、あの日、事故に遭ったときに失くしたと思っていた。


わたしはちゃんと泣くことができたんだ。

悲しいと思ったときにまだちゃんと涙が出るんだ。