「瑠衣はどこで買ったんだと思う?この子」

「さあ。護衛用って言ってたけど、西区ってそんなに物騒だった?」

「どうなんだろ。西区には行ったことないからわからないな」


ナナちゃんと瑠衣ちゃんの話し声がドア越しに聞こえてくる。

そして話題はわたしじゃなくて、あのアンドロイドについてだとわかったとき、自然と手に力が入った。


瑠衣ちゃんが「てかさぁ」と声をあげる。



「あの子、お金あったっけ」

「あまりはひとり暮らしだよ」

「あーそういえばそんなこと言ってた気がする。じゃあますます、アンドロイドなんて買う余裕ないんじゃないの?」


どくん、心臓が嫌な跳ね方をした。

悪い予感とはいつも的中してしまうもので。

聞きたくないのに、遠ざかるための足も、耳を塞ぐための手も動かなかった。



「どっかから盗んできたんじゃない?」「あまりにそんな度胸ないって」「たしかに」「なんでひとり暮らししてるんだったかな」「さあ、親がウザかったんじゃない?」「親……ああ、そうだ」「ナナ?」「あまりと同じ中学だった子が言ってた」「なにを?」「あの子、親いな──」



バンッと大きな音がする。

教室にいた人たちが一斉にこちらを見た。

もちろん、ナナちゃんと瑠衣ちゃんも。