午後の授業には比べ物にならないものの、午前中の授業だってそれなりに眠気を運んでくる。

11月の日差しはオブラートのようなカーテンに遮られて、教室内はちょうどいい温度になっていた。



「……しろ、────藤白!」


うつらうつらしていたわたしの耳に、突如として飛びこんできた怒声。

びくりと体が跳ね上がり、膝にかけていたブランケットを落としてしまった。


ブランケットを拾いあげることも忘れて顔をあげると、怖いことで有名な数学の先生が鬼の形相でこちらを睨んでいた。

しまった、いつもなら数学では眠くならなかったのに。

よく眠れていない上に、昨日いろんなことがあったから油断していた。



「私の授業で居眠りとはずいぶんと余裕だな」

「は、はい……あ、いえ……すみません」

「次の問題はお前が解いてみろ。教科書143ページ、問6だ」


不自然に静まりかえる教室がわたしをさらに追い詰める。

あわてて指定されたページをひらいたけれど、わたしの口からはえっと、と情けない声が漏れるだけ。


問6はたいてい、応用問題。

先生はそれをわかっていてわたしを指名した。

怖くて意地悪なのって最悪だと思うけれど、居眠りしたわたしが全面的に悪い。