この1Kの部屋は、わたしの高校入学が決まったときに手に入れたものだ。


外観は少し侘しさを感じさせるものの、内装は予想よりもしっかりしていて、部屋の広さも一人で住むには上等だった。

今どきアンドロイドを置くことを想定されていない完全単身用アパートは珍しい。

それでも破格ともいえる家賃で、しかもアンドロイドを所有していないわたしにとって、もってこいの条件だった。


ここが今の、わたしの唯一の帰る場所だった。



「はー、さっぱりしたぜ」

「……お風呂、入っても平気なんだ」


バスタオルで濡れた頭を拭くアンドロイドにちらりと視線を投げかける。



部屋に入るなり、ふらりと脱衣所に行ったアンドロイド。

てっきり洗面台で自分の姿を確認するのかと思えば、なかなか出てこない。


気になって様子を見に行ってみると、優雅にシャワータイムを決め込んでいたからびっくりした。



────おいおい、覗きは趣味悪いぞ。

────……なんで?


なんでわたしの許可なく勝手に使ってるの?

なんでお風呂に入れているの?

そのふたつが混ざった、渾身のなんで?だった。


こうして何事もなく出てきているのだから聞くまでもない。

だけど精密機械は水に濡れてはいけないものだと思いこんでいた。

つまり、お風呂にも入れないものだとわたしは思っていたのだ。