えっと思ったときには今朝と同じく体勢が崩れていて。

そのまま転んでしまったわたしは顔面をしたたかにぶつけた。



「いっ、た……」


顔をあげる。

その瞬間、ひっ、と息を呑んだ。


わたしがつまずき、そして雪崩れかかるようにしていたのは。



黒服をまとった長躯の男だった。



よくてヤクザ、悪くて殺し屋だ。


目をつぶっていてもわかる人相の悪さに、すぐに堅気の人間じゃないと判断する。

きっと組同士の抗争か、殺しの仕事の帰りなのかもしれない。男は汚れていた。