「よし」
今まで雪の中に埋もれていたノアがむくりと起きあがって、わたしに視線を移した。
ノアのよし、には前科があった。海に投げ入れられたことを思い出しながらわたしは身構える。
「なるか。家族に」
「うん……うんっ!」
抱きついたわたしにノアが口づけをした。
もちろんそれは頬だったけれど、びっくりしたわたしは目を丸くする。
「なっ……え、……え!?」
「これが人間の親愛の証なんだろ?」
「そう、だけど……でもいきなり!」
「まあそう照れさんな。俺もお前のこと好きだぜ」
「も、ってなに。も、って。いつわたしが……あっ」
そういえば、なんか、
…………言った、気がする。
うう、本当のことなんだけど……あらためて思い返すと恥ずかしい、とか、思ってたら、心読まれる!
心読むの禁止!これも読むの禁止!!
「てか、もー……心読めるなら最初から言ってよね。いきなりはびっくりするじゃん」
「言おうとしたぜ、最初。でもお前が遮ったから」
うそ、そうだっけ。
「そうだよ」
「心と会話しないで!」
夜明けはそこまでせまっている。
うす青い世界はひんやりとしていて、つめたく澄んだ空気を胸いっぱいに吸いこんだ。
嬉しいときも、
くじけそうなときも、
幸せだなって思うときも、
いつだって、隣にいたのはノアだった。
……ねえ、これ、ノアに言ってるんだよ。
聞いてるんでしょ。返事は?
ノアは目をまん丸にさせたあと、とびきりの笑顔をわたしにぶつけた。
『ブルー・ロマン・アイロニー』end.



