「いっ、た……」

「あまり!やめろ!」


立ちあがろうとしたわたしをノアが制する。

早く逃げなきゃいけないのに。

じゃないとノアは連れていかれてしまう。



「もういいから」


ノアが言った。



「全然よくない!」


わたしは叫ぶ。


アンドロイドなんていなければとあれだけ世界を恨んでいたわたしは、ノアがアンドロイドじゃなければと運命を憎んでいた。


だけどノアがアンドロイドじゃなかったら、わたしはとっくに自分を見失っていた。

とうとい感情を忘れてしまっていた。

自分の“ほんとうのさいわい”に気付けなかった。



「……ノア、わたし、見つけたんだよ。自分のほんとうのさいわいを」


それは、ずっとわたしの近くにあったんだ。


大切な人と過ごす何気ない日常。

おいしいねって一緒に食べるご飯。

眠れない夜に語ること、一緒に空をながめること。

おはよう、おやすみ、ただいま、おかえりって言いあえること。





「ノアと過ごす日々が、わたしにとってのしあわせだった」