それを目撃してしまったのは、夏休みが明けてしばらくがたった放課後のことだった。

先生に頼まれて社会科の準備室を訪れたわたしがそのドアを開けたとき。



「っ、え……」


中には人がいた。

正確には人と、アンドロイドが。


驚いたようにこちらを振りかえった人物に、わたしはさらに目をひらく。



「……ナナちゃん。いま……」

「忘れて。いい?」


わたしがこくりとうなずく。

ナナちゃんはそれでも固い表情のまま教室を出ていった。


その後ろからナナちゃんのアンドロイドがついていく。

いつものように伏し目がちで、わたしとノアに会釈をして行ってしまった。



「すげーもん見ちまったな。どーするあまり?」

「どうするも、なにも……」


わたしは呆然とそこに突っ立ったまま、つい先ほど見た光景を思い出す。


ちっとも日に焼けていないナナちゃんの白くて細い腕が、アンドロイドの頬に伸びている。



肌と肌が吸い付くように────ふたつの唇は、重なっていた。