ブルー・ロマン・アイロニー




────ねえ、おとうさん。おかあさん。今日もかえってこないの?


物心ついたときから、お父さんとお母さんは家を空けがちだった。

あの頃はとくに、アンドロイドが世界で普及されるようになって日が浅くて、毎日のように開発や研究に追われていたんだと思う。


泣いて、行かないでって引き留めるわたしに、ふたりはすごく困っていた。

わたしとアンドロイドのどっちが大切なのって質問もしたっけ。そんなこと、答えられるわけないのにね。


お父さんとお母さんは、わたしも、そしてアンドロイドも同じくらい、愛していたもの。

そこに優劣なんてつけられないほどに愛していたんだから。


でも小さかったわたしは、そんなことに気付くわけがなかった。

わたしがどれだけ泣いても、最終的にはわたしを子守り用のアンドロイドに任せて研究所に行ってしまうふたりに、わたしはいつも思っていた。


わたしよりもアンドロイドのほうが大事なんだって。

お父さんとお母さんを独り占めにしちゃうアンドロイドなんて嫌いだって。

いつも、思ってた。