「いろいろ酷いこと言ってきたよね。この前も、それから今までも。本当にごめんね」
それから。
「ありがとう。助けてくれて、帰ってきてくれて……ずっと、見守っていてくれて、ありがとう」
そっとノアに手を伸ばす。頬に触れる直前で、その手がぎゅっと握られた。
ちゃんと体温がある。ノアはここにいる、生きている。
「俺はお前を取られたくなかったのかもしれない」
「……ノア」
「たぶん、そゆこと」
ごめん、とノアの唇が動いた。
わたしはゆっくり起きあがる。
「おい、大人しく寝てろってセンセーにも言われたろ」
ベッドから離れて、入口付近に埋め込まれてある鏡の前に立った。
そこに映っていたわたしはたしかに青白い。
これは心配されるなと思いながら鏡の中の自分に触れたあと、そっと目を閉じる。
しばらくして目をあけてると、決意を固めた自分の顔と目があった。
わたしはノアを振りかえる。
「帰ったら話したいことがあるの」
「……なに」
「────わたしのすべて」



