ブルー・ロマン・アイロニー



残されたのはわたしと、さっきからずっと黙っているノアのふたりきり。

ベッドに仰向けに寝ていたわたしは、寝返りを打ち、横向きになる。

そしてノアに話しかけようとしたときだった。



「大丈夫か?」


保健室の入口からルーカスくんの声がしたのは。

定期検診、終わったんだ。


というかわざわざ来てくれたのかな。

きっと帰ってきて早々だろうに、なんだか申し訳ないな。


とっさに起きあがろうとしたけれど、またしてもノアによって阻止される。



「ちょっ……」


今度こそ文句を言おうとするわたしを無視して、ノアがするりとカーテンの向こうに消えていく。

カツカツと歩いていく音が消えたかと思えば、少しして微かにふたりの会話が聞こえてきた。



「あまりはいま寝てる」

「……顔だけでも見ていく」

「だめだ。見せない」

「あんたに言われる筋合いはない」


声だけでも伝わっている一触即発の空気。

やばい、やばいよ。保健室で乱闘騒ぎはまずいよ。

ノアはルーカスくんに攻撃できないけど、ルーカスくんがノアをタコ殴りにしてしまうかもしれない。


はらはらしながら、やっぱりわたしも、と起き上がりかけたときだった。





「ある。あいつはお前のじゃない。俺のだ」