そのあと午後の授業に出たところまでは覚えている。
5限目は体育で、蒸し暑い体育館でバスケをしていた。
あんまり運動が得意じゃないわたしはもはや成績のことは諦め、プレーの邪魔にならないように隅っこで立っていた。
立っていた、と思う。
その辺りの記憶はひどくおぼろげで、気がつけばわたしは白い天井の下で眠っていた。
「あれ……ここ、保健室?」
「そうだよ」
声のした方に目を向けると、そこにはノアがいた。
ベッドの脇に備え付けられている椅子に腰かけて、こちらをじっと見下ろしている。
「ノア」
「おい、いきなり起きあがろうとすんな」
「でも、ノアが……」
「わーってる。俺はもうどこにもいかねえから。だから大人しく寝てろ」
ちょっと押し戻されただけで、まるで力が抜けたようにわたしの体はベッドに吸いこまれたから。
この体はそんなにも衰弱していたのかとびっくりした。



