ブルー・ロマン・アイロニー



ノアはすぐにしまったという顔をした。



「……そうだな、少し言い過ぎた。わる──」

「というかノアにはなんの関係もない!だいたい、大体ね……っ」


ああ今ノア謝ろうとしたな、なんて心のどこかで思ったけれど。

わたしの口は止まることなくそれを言い放ってしまった。



「アンドロイドなんかに人間の気持ちがわかるわけない!!もう出てって!!」


それだけはもう言わないようにって気をつけていたのに。

気をつけていたのに、それはたしかな悪意をもってわたしの口から飛びだした。


ノアがどんな顔をしているのかわからなくて、それでも顔をあげられなくて。


はあ、はあと肩で息をするわたし。

びくりと肩を揺らしたのは、正面に座っていたノアが立ちあがった気配がしたから。


どこかに遠ざかっていく足音。

そうして、バタンとドアが閉まる音がして。



ふと、あの映画を思い出した。孤独な少年が、友人と銀河を渡る鉄道に乗って旅をする物語。



『どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう』


孤独な少年が友人を振りかえると、そこにはもう誰もいなかった。





「…………ノア?」


ようやく顔をあげることができたわたしの世界に、そのアンドロイドはもういなくなっていた。


この日を境にノアはわたしの前から姿を消した。