「……今日は本当にありがとう」 「こちらこそ」 わたしよりもずっと高い位置にあるシャツの、左肩の部分だけ色が変わっていた。 わたしは自分の濡れていない服を、そしてひらいてすらいない傘を見つめる。 「さっき、ああ言ってもらえて……わたし、────……嬉しかった」 ああ、なんで今まで忘れていたんだろう。 ルーカスくんは本当に引っ張りあげてくれたのだ。 わたしの心の奥底で眠っていた感情を、掬い上げてくれた。 嬉しい。 それは長らく失っていたわたしの感情だった。 「……俺も嬉しい」