「……とにかく。これでわかったでしょ?わたしはなにもアンドロイドを毛嫌いしてるわけじゃないんだってこと」

「俺のことも嫌いか?」


ノアの落ち着いた声が夜の静寂に落ちてくる。


わたしはなにも答えなかった。

もう入ろう、とノアに背を向ける。

後ろからノアの視線を感じたけれど、わたしは振りかえらなかった。


いや、振りかえることができなかったんだ。


振りかえってしまうと、いけないことを言ってしまいそうだったから。


結局、わたしのほんとうのさいわいも、ノアのほんとうのさいわいもわからず終いだった。

だけどその日から、ノアがぼんやりと夜空を見上げる時間が増えたように思う。

そこにあるのは、押しつぶされそうな闇だったり、月だけが爛々と浮かぶ宵だったり。


それでも、あの映画のような銀河が夜のキャンバスに広がることはなかった。