「はーい、寝てる人起こしてー課題の説明するよー」


先生が手元でなにやら操作をすると、外界を遮断していたカーテンが前から順に自動で開いていく。

それに対して、うう、とか、ねむー、とか声をあげてクラスメイトたちが順々に起きあがってくる。

後ろから見ていたらまるでゾンビ映画の冒頭みたいだとひそかに思った。


ノアとは逆の隣を見ると、ルーカスくんも起きていた。

どうやらいま起きあがったようではなく、ずっと起きていたようだ。

前から回ってきた課題のプリントに視線を落としていたけれど、わたしの視線に気付いたのか顔をあげた。



「ルーカスくん。映画、よかったね」

「さあ」


ここ最近、わたしともぽつぽつ会話をしてくれるようになったルーカスくん。

がっつり無視されたのはあの初日だけだった。

嫌われていたわけじゃなかったことにどれだけ安堵したことか。

そしてみんながルーカスくんって呼んでいるし、わたしもさりげなくルーカスくんと呼んでいる。

いまのところお咎めなしだからこれもほっとした。


ルーカス。

無性に呼びたくなる名前だ。

調べたところ、どうやら“光”を意味するらしい。

ノアールとルーカス。闇と光。



「というかプリント破いてない?千切っちゃだめだよ、それ」


わたしはルーカスくんのほうに気を取られていて気付かなかったんだ。

ノアがなにやら考えこんでいる様子に。

映画を見終わったあとも、放課後になってからも、ノアはどこか様子がおかしかった。

不思議に思ったわたしは、それでもなにも訊くことはしなかった。