「お前らもういいだろ?これ以上の質問は受け付けませーん」
「いや先生に言ってないしー!」
「30歳独身じじいは黙ってろー!」
「誰がじじいだクソガキ共。ったく……成瀬の席は──」
えーと、と視線を彷徨わせた先生はわたしの右隣でぴたりと止めた。
つられてわたしも右隣に顔を向ける。
そこには4月から持ち主がいない空席がふたつあった。
「成瀬」
「はい」
「お前、ひとり?」
濁してはいるけれど、アンドロイドのことであることは火を見るよりも明らかだった。
成瀬くんが微かにうなずく。
「俺だけです」
「だよな。見たらわかる。今どき珍しいのな」
たしかにと思いながらわたしは視線を教卓に戻した。
かちり、ぶつかった成瀬くんとの視線。
まさか向こうもこちらを見ているとは思わず、その吸いこまれるような宝石に囚われる。
どこまでも透き通るようなその瞳は力強さと儚さが同居しているように見えた。
この瞳、どこかで見覚えがある。
わたしはこの瞳をどこかで見たことがあった。
そのまま目を逸らすタイミングを掴めずに、3秒くらい見つめ合ってしまった。
ふい、と逸らしたのは向こうから。
わたしもドキドキしながら顔を逸らした。
なんだったんだ、いまの。