ノアとの生活はそれなりに順調で、それなりに楽しかった。

というのもノアは好奇心が旺盛で、とくに食に対してのこだわりが強かった。

いつの間にかわたしよりもこの町に詳しくなっていて、どこになんの食べ物屋があるだとか、あそこの裏路地近くにあるラーメン屋が穴場だとか、そういった情報をどこからともなく仕入れてくる。



「あー……うめぇー……これだよこれ、日本人はやっぱり蕎麦だよな」

「日本人でも人間でもないくせに」


とはいえこの上ない至福だと言わんばかりに蕎麦をすするノアを見ていると、わたしまで食欲が刺激されてしまい、もふもふと蕎麦を口に運んだ。



「おいすすれよ。蕎麦はすすれって学校で教わらなかったか」


蕎麦って麺類のなかじゃあんまり選んだことなかった。

だけどここの蕎麦は香りも食感もよくて、決して大食いではないわたしでもするすると食べることができた。



「だァから箸でもそもそ口に運ぶなって!いいか?蕎麦はすすることで口ん中に香りが広がって鼻からその香りが──」