こうしてこの日、わたしはナナちゃんたちと決別をした。


もうとっくの昔からわたしたちを結びつけていた糸は切れていたのかもしれない。

わたしはそれに気付かないふりをして、何度も、何度も結び直していた。


だけどそれももう終わり。

わたしは、わたしから、自分の首を絞めていた糸をやっと外すことができたのだ。



「……ばいばい」


振りかえった先にはもちろんナナちゃんたちの姿はない。

つう、と頬を伝って廊下のリノリウムに吸いこまれていく一滴の雫から、

教室から、わたしは自分の進む方向に視線を移したのだった。



それからはまあ、予想通りの毎日で。

どれだけ居づらくとも陰口を言われようとも、わたしが涙をこぼすことはなかった。


誰かと話したいなと思ったとき、心が折れそうになったとき、横を見ればいつだってノアがいた。

いつしかノアを名前で呼ぶことにも慣れて、周りからの目や声が気にならなくなったのは。


底抜けに明るくてああ言えばこう言う、黒服で強面で、優しいアンドロイドのおかげだと思う。……きっと。