「はぁ……このタイミングかよ……良かったのか悪かったのか……」

 どういう意味かは分からないけれど、新はぶつぶつ呟いてわたしから離れた。

 そして手を出してくる。

「スマホ貸して。録音するから」
「え? あ、うん」


 何だか録音するのも定番化してきている気がする。

 新は毎回何を録音してるんだろう?

 疑問に思いながらもスマホを渡して離れた。


 聞くなよ? という言葉と共に返してもらって、「じゃあ」と別れる。

 少し切なげな眼差しに見送られながら、霞に包まれてまた四角いオレンジの光に彩られた廊下に戻った。

 静かな廊下で一人になってから、今更ながら心音が早くなって収まらない。

 だって、さっきのって……やっぱりキスされそうになってた?


 抱きしめられたり、迫られたり……キスされそうになったり。

 一つ一つは別の新だけれど、どの行為もわたしへの好意が見て取れて……。


 わたし、自信持っても良いのかな?

 このループが無事終わったら、気持ちを伝えてもいいのかな?


 好きすぎて、怖くて言えなかった言葉。

 それを伝えてもいいのかな?


 あと二回。終わったら、伝えてみよう。

 そんな勇気を持てた。


 もしかしたら、このループはやっぱりわたしが願ったもので、勇気を出せるようにするために神様が手伝ってくれたのかも知れない。

 そんなことを考えながら、わたしは九回目の保健室のドアを開け中に入った。