「もう……付き合ってるのは隠してないけれど、唯人くんがモデルをしてることはいまだに秘密なんだから、あんまりその写真出しちゃダメだよ?」

「ん……分かってるよ」

 そう言ってスマホをしまった唯人くんは、私に近づいて肩を抱いた。

 トクン、と優しく心臓が跳ねて、トクトクと鼓動が早まる。


「今は直接会ってるから、直接補給したいしね」

 そうして自然な仕草で顎をすくい上げられる。

「唯人くん、ここ学校――んっ」

 注意するけれど、その言葉ごと食べられてしまう唇。

 少しずつ深くなっていくキスを私は拒めない。
 まあ、拒みたいとも思わないんだけど。

「んっ……ふぁ、唯人くん……」
「……はぁ……まだまだ伊千佳が足りない……」

 唇が離れると、今度はぎゅうっと抱きしめられる。

 その腕の中の心地よさに浸っていると、ポツリと唯人くんがつぶやいた。


「……いつかさ……同棲しない?」
「え?」

 突然の話題に驚くけれど、続いた言葉が甘く響く。
 
「また、一緒に暮らそうよ」
「……うん」

 突然だった二人きりの同居。

 驚いたし、はじめは気まずかったけれど……でも、そのおかげで唯人くんのことをたくさん知れた。

 たくさん知って、こんなにも好きになれた。


「伊千佳……好きだよ」
「うん、私も……」

 また、唇が触れ合う。

 大好きな彼氏のキスを受け入れる。


 私の恋人は、地味でカッコよくて……甘くて優しい人。
 それでいて、私の唇をたくさん食べたがるオオカミさんです。


 END