【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。

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 向かった先は街にある五階建ビルの三階。

 貸しスタジオがあるらしくて、今日はそこで撮影するんだとか。


「長谷川さん、おはようございます。今日はよろしくお願いします。あと、伝えておいた見学する友達の花田伊千佳さんです」

「よ、よろしくお願いします」

 カメラマンの長谷川さんや雑誌編集部の人に挨拶をしながら紹介してもらう。

 初めての場所や、(なご)やかな中にもしっかりある緊張感に私は身が引き締まるような思いをしていた。


 そんな緊張感のある場所で、慣れた様子でみなさんと話している村城くんがいつもより大人っぽく見える。

 私はスタジオの端っこに用意してもらった椅子に座って、そんな村城くんを目で追っていた。


 スタジオのセットも、村城くんの衣装やメイクも終わって撮影が始まる。

 撮り始めたらもっと緊張感が増すのかと思っていたけれど、そんなことはなくて……。


「うん、そのままの表情で。今度は腕を額に当てるように持って行ってー。あ、そこでストップ」

「その顔じゃあ笑い堪えてるみたいだって~。もっとこう小動物を愛でるみたいに」

 まるで世間話をしているような口調で、そのままの雰囲気で進んで行く。


 それでもカメラマンの長谷川さんの目は真剣で、僅かな緊張感も保ったままだ。


 凄い。

 シンプルに、そう思った。