【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。

「本当に嫌じゃなかったんだ……ヤバイ、嬉しい……」

 眼鏡を取ったことで良く見えるようになった茶色の目が、熱を持ったように少し潤む。
 嬉しそうにほころんだ私好みの顔が、近付いてきた。

 向き合った状態で両腕を伸ばしてきた村城くんは、そのまま私を閉じ込めるように椅子の背もたれに手をつく。
 思わず身を引くけれど、座っている私に逃げ場はない。

「ねぇ、伊千佳さん」
 色気を含んだ、熱っぽい声。

「な、何?」
 ドキドキと高鳴ってきた鼓動。
 それを気づかれないように、息を整えようとするけれど上手くいかない。

「キス、していい?」
「ふへぇっ⁉」

 確認の言葉に変な声が出てしまう。
 でもそんな私を奇妙に思うことなく、村城くんは少しずつ顔を近付けてくる。

「今、すっごくしたいんだ」
「えっと……ダメって言ったら?」

 嫌ではない。
 でも、さっき彼が言ったように私たちは付き合ってるわけじゃないし、そういうことをする間柄じゃないはずだ。

 だから、いいかと聞かれたらダメじゃない? という考えで聞いてみたんだけれど……。


「……ごめん、ダメって言われても止まれそうにない」
「ええぇ……?」

 困り果てる私の目の前には、あと数センチで触れてしまう整った顔。