(女子大学生であれば御伽話(おとぎばなし)のような甘美な話は嫌いではないでしょう……?これで上手くいくと良いのだけれど)
 時計を見た幸枝は、
 「あらいけない、もう直ぐ時間だわ。先にお暇するわね、さよなら」
 と言って空になったティーカップだけを置いて席を立つ。
 しんと静まり返った紅茶の水面が揺らぐように動いた。
 腕時計に目を遣りつつカウンターで立ち止まった幸枝は、がま口の中を探る。
 「叔父さん、ご馳走様。はい、二人分のお代ね」
 声高に話しながら代金を手渡した幸枝は急ぎ足で喫茶店を出て本社へ向かうことにした。