授業が終わり、オリバーとアイラは一緒に帰宅の馬車に乗る。

「ねぇ。結局チャドって何がしたかったの?」

 アイラの質問に、オリバーは一度息を吸って、調子を整えてから話す。

「あの土地をこれ以上の採掘から守りたかったみたい。地震を起こしていたのは警告のつもりだったんだって。自分では、微弱な地震しか起こせないから、僕の増幅能力を使いたいって言っていた」
「……オリバーに増幅能力があるって、どうしてわかるの?」
「え? 聖獣ならわかるんじゃないの?」
「そうかな。だってリーフェは、自分の能力がはっきり分かったのは、私たちが赤ちゃんの頃だったって言っていたよ?」

 力を与えた聖獣本人にも、その性質はわからないものなのか。だとすれば、どうしてチャドは、ほんの数日しか一緒にいなかったオリバーの能力に気づいたのだろう。

「チャドにそういう能力があるとか?」
「うーん。私も分からないけど。チャドにはちょっと引っかかるところがあるんだよね」
「何?」

 アイラはオリバーの耳に手を当て、内緒話をするように囁いた。

「あの子、なんかちょっと欠けているみたいなの」
「欠けている?」
「うん。説明が難しいんだけど。私、生き物にはみんな、丸い感じを受けるんだよね」

 アイラが独特の表現をするので、オリバーは混乱する。

「ちょっと待って、アイラ。僕、いまいちわからない」
「誰でもなんだけど、よく見ると体の中心に丸い玉があるの。ぴかぴか光っているのよ。お母様とかお父様のは、とってもきれいよ!」
「幽霊が見えるのとおんなじようなもの?」
「多分。幽霊はね、体が無くなった時に、その球を広げて自分の形を作るみたいだよ? 消える時に、玉の形に戻って消えていくの」
「へぇ……」

 アイラが人ならざるものを見ることは知っているし、自分もアイラを通して見たことがある。だが、その時オリバーに見えたものよりも、もっと多くのことが、アイラには見えているのだろう。

「つまり、丸い光は魂ってこと?」
「そうかもしれない。体が無くなっちゃったら悲しいから、魂で人の形を作るのかも」