8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3


「オリバーと話してくる。ドルフ、オリバーはどこだ?」
『お前たちの寝室で寝ている。あいつの時は止めていないから、そのまま入っていけばいい』
「わかった。ドルフ、手間をかけさせたな」

 オスニエルはドルフに手を振ると、駆け出していく。それを横目で見ていたリーフェが眉をひそめたままポツリと言った。

『本当だよ。ドルフ、しんどくないの? 広範囲の上に、四人を残した状態で時を止め続けるって、結構大変だよ?』
『心配せずとも、俺は強いからな。問題ない』

 涼しい顔で言うドルフに、リーフェはむっとしたまま、そっと手を添えた。

『おまえ……』
『増幅能力って、こういう時のために使うものじゃないの?』

 ドルフは、少し驚いたように彼女を見やる。

『お前が、頼まれもしないのに力を使うのは珍しいな』
『必要だと思えばするよ。私だって、オリバーが心配なんだからね』
『……そうか』

 ドルフはフッと笑い、放出する力を少し抑える。リーフェの増幅能力のおかげで、それでも十分に現状を維持できそうだった。

* * *

 空間がゆがんだような感覚がして、オリバーは違和感を覚えて目を開けた。

「母……上?」

 ずっと付き添っていたはずのフィオナが、いつの間にかいなくなっている。
 オリバーの胸に暗い影が落ちた。

(いよいよ、母上も僕のこと、嫌になっちゃったかな)

 考えただけで不安になる。どうしてこんなことを考えてしまうのかも不思議だ。
 母もアイラも、自分に好意を示してくれているというのに。

(僕は、自信がないのかな)

 どうして自分が好かれているのかわからない。寄せてくれる愛情を信じることができない。だからこそ、いつまでたっても不安がぬぐえないのだ。

 アイラがいるから、リーフェにとっても両親にとっても、自分は一番にはなりえない。だけどオリバー自身、アイラが好きだ。アイラが好かれるのは理解できるからこそ、それは仕方ないと思っている。頭で理解しているのに、感情がついていかないからタチが悪いのだ。