オスニエルは一瞬思考が停止した。しかし、ようやく理解が追い付いてくる。
「フィオナの時のように時間を戻したってことだな?」
『ああ、しかも、オリバーを中心に戻してしまったんだ。そのせいで、オリバーにはその時の記憶が残っている。お前がいたはずの領主館が崩れたところも見てしまった』
「つまり、……オリバーは自分のせいで俺が死んだと思っているのか?」
フィオナとドルフが目を見かわして頷く。
『理解が速くて助かる。俺が時を戻したから、実際にお前は生きている。しかし、オリバーにはしっかり記憶が残っていて、そのせいで自分を責めているんだ』
「それと、……あの子、今までもずっと我慢してきたようですが、アイラに対して劣等感を持っているようで……あ」
フィオナが途中で何かを見つけたのか、言葉を途切れさせる。オスニエルが視線をたどると、そこにはリーフェとアイラがいた。
「知ってる。私。オリバーに言われたこと、あるもん」
「アイラ」
アイラの瞳は潤んでいる。いつもご機嫌な娘がその表情をするのは珍しく、オスニエルは慌てて近づき、膝をついてアイラに目線を合わせた。
「泣くな、アイラ」
「わ、私のこと嫌いなのかなって思って、すっごく悲しかったの。私は、オリバーが大好きなのにって。すごく嫌な気持ちになった」
「うん」
オスニエルが相づちを打つたびに、アイラの目に涙が浮かび上がってくる。
「でも、オリバーがいないと、私、すごく寂しいの。私のこと嫌いでもいいから、元気になってほしいよ。……お願い、お父様お母様、助けて……!」
ついに泣き出したアイラに、オスニエルは胸が締め付けられる。
隣にいたリーフェは、納得のいかないような顔をして、アイラをじっと見ている。
オスニエルはアイラを子供の時のように腕に抱き上げる。
「アイラもつらかったんだな」
アイラは充血した潤んだ瞳でオスニエルを見つめる。
「うん。……私、どうやったらオリバーに嫌われずに済むかな?」
「そのままでいい。アイラは素直なところが魅力だ。オリバーも分かっているさ」
「そうよ、アイラ。オリバーはあなたが好きだから、だからつらくなっているのだと思うわ」
フィオナにもそう言われ、アイラは不安そうではあったが頷いた。オスニエルは彼女をフィオナに託した。



