8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

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 視察地であるベンソン伯爵領で、オスニエルは眉をひそめていた。
 地盤沈下が起きた場所は、鉄鉱石が取れたとして、ここ半年で補助金をもとに開いた鉱山だ。この土地の鉄鉱石は特に鉄の純度が高く、報告を見てオスニエルも期待していた。
 しかし、ここひと月ほどは、鉄鉱石が全く取れない。すでに採り終えてしまったのではないかという気さえする。

「弱い地震でも地盤沈下が起こるということは、もともとの地面が弱いということだろう? これ以上掘り進めるのは危険ではないのか?」
「しかし、採掘範囲を横に広げていけば、再び鉄鉱石が出てくるやもしれません」

 ベンソン伯爵との話し合いは平行線だ。しかしオスニエルとしては、危険を冒し続けてまで、採掘を続ける必要な無いと思っている。

 東部にある赤土の土地は、昔から安定して鉄が取れる地域だ。もちろん今は鉄が欲しいからほかの処で出るならばほしいが、けが人が出るとなれば話は別だ。

「このまま採掘を続けて、死人が出たらどうする。領民だって、労働だけして成果が出なければ腐っていくだろう」
「あれだけの鉄鉱石が取れたのです。掘り進めれば必ずや……!」

 そもそも、鉄が欲しい、採れた鉄鉱石は高値で買い取ると、声高に言っているのは王家の方だ。その熱意に対しては、評価してやるのが筋ではあると思う。

「わかった。だが、もう一度地質の調査を行おう。あまりに短期間で枯渇したとあっては、信じたくないのは俺も同じだが、その可能性だってないわけじゃないんだ」
「しかし……」
「うるさい。話はこれで終わりだ。地盤調査の結果を見て判断する。もう出ていけ」

 ベンソン伯爵とのこのやり取りだけで、数日が過ぎている。
 地盤沈下による影響は、鉱夫に数名けが人が出た程度で済んだが、もしもっと大きな地震が起これば、さらなる被害が出ることも予測できる。
 判断をするのが王の仕事だ。しかしそのためには、たくさんの情報が必要となる。

「一度王都に戻るか。結果が出るのを待つのが先か。……悩ましいな」