アイラにも責められ、チャドは体をかがめ、金色に淡く光る体を小さく丸めた。
『……だ』
「え、なに?」
『我は我の土地を守りたかっただけだ! それに、みんな我だけが悪いように言うが、あいつが我の願いを聞いたのは、寂しがっていたからだぞ!』
チャドの反撃に、みんなが動きを止める。
『自分だけの聖獣がいたらいいのに、と言っていた。お前たちが、不安にさせているんだろう。だからオリバーは、我なんかの言葉に頷いたんだ』
「オリバーは誰にだって優しいわよ! 勝手なこと言わないで!」
それでも反論しつつ、アイラの胸にはとげが刺さったような感覚があった。
『みんな、アイラの方が好きだから』と言ったオリバーは、ずっと不安を抱えていたはずだ。気づいていて、何もできなかったのはほかならぬ自分自身ではないか。
『オリバーに加護を与えているのは私だよ? なんでチャドなんかの加護を欲しいの?』
リーフェもぷんぷんと怒り出す。
『うるさい! オリバーは寂しがっているんだ! 我だってっ』
「もうっ、チャドなんて嫌い!」
アイラは、チャドを掴むとベッドに投げ飛ばした。
『ふぎゃっ』
クッションのいいところに飛ばされたので怪我はないものの、不満げに起き上がったチャドは、不思議そうな顔をしているアイラと目があった。
「欠けてる……?」
『は? 何がだ?』
アイラはチャドを触った瞬間、〝何かが足りない〟と感じた。
「ねぇ、リーフェ。チャドってなんか変じゃない?」
『知らないよ、こんなネズミ!』
リーフェはまだ怒っていて、『ぷんぷん』と言いながら出て行ってしまう。
「あ、待ってよ、リーフェ」
『この暴力娘め!』
アイラが追いかけようとすると、背中にチャドのそんな声がぶつかってくる。
「うるさいわね。オリバーの痛みはこんなものじゃないのよ、馬鹿!」
アイラも怒ったまま出て行ってしまう。
チャドはベッドの上で転がったまま、ドルフをじろりと見る。
『……お前も助けんか。年寄りは労るものだぞ』
『悪いが、俺も機嫌が悪い』
ドルフも言葉少なに、部屋を出て行った。



