8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3


 アイラにも責められ、チャドは体をかがめ、金色に淡く光る体を小さく丸めた。

『……だ』
「え、なに?」
『我は我の土地を守りたかっただけだ! それに、みんな我だけが悪いように言うが、あいつが我の願いを聞いたのは、寂しがっていたからだぞ!』

 チャドの反撃に、みんなが動きを止める。

『自分だけの聖獣がいたらいいのに、と言っていた。お前たちが、不安にさせているんだろう。だからオリバーは、我なんかの言葉に頷いたんだ』
「オリバーは誰にだって優しいわよ! 勝手なこと言わないで!」

 それでも反論しつつ、アイラの胸にはとげが刺さったような感覚があった。

『みんな、アイラの方が好きだから』と言ったオリバーは、ずっと不安を抱えていたはずだ。気づいていて、何もできなかったのはほかならぬ自分自身ではないか。

『オリバーに加護を与えているのは私だよ? なんでチャドなんかの加護を欲しいの?』

 リーフェもぷんぷんと怒り出す。

『うるさい! オリバーは寂しがっているんだ! 我だってっ』
「もうっ、チャドなんて嫌い!」

 アイラは、チャドを掴むとベッドに投げ飛ばした。

『ふぎゃっ』

 クッションのいいところに飛ばされたので怪我はないものの、不満げに起き上がったチャドは、不思議そうな顔をしているアイラと目があった。

「欠けてる……?」
『は? 何がだ?』

 アイラはチャドを触った瞬間、〝何かが足りない〟と感じた。

「ねぇ、リーフェ。チャドってなんか変じゃない?」
『知らないよ、こんなネズミ!』

 リーフェはまだ怒っていて、『ぷんぷん』と言いながら出て行ってしまう。

「あ、待ってよ、リーフェ」
『この暴力娘め!』

 アイラが追いかけようとすると、背中にチャドのそんな声がぶつかってくる。

「うるさいわね。オリバーの痛みはこんなものじゃないのよ、馬鹿!」

 アイラも怒ったまま出て行ってしまう。
 チャドはベッドの上で転がったまま、ドルフをじろりと見る。

『……お前も助けんか。年寄りは労るものだぞ』
『悪いが、俺も機嫌が悪い』

 ドルフも言葉少なに、部屋を出て行った。