8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3


『落ち着いたか』

 結局、アイラが落ち着いたのは、二十分後だ。

『子供みたいだねぇ、アイラ』

 リーフェが尻尾で彼女の背中を撫で、「私はまだ子供よ!」と訳の分からない反論をするのがアイラだ。
 アイラは鼻をすすると、じろりとドルフを睨む。

「ドルフ、知っているんでしょ? 説明して。オリバーに何があったの?」
『うーん。結構ショッキングな内容だぞ? 本当に知りたいのか?』

 普段尊大な態度ながらも基本は甘やかしてくれるドルフがそう言うので、アイラは一瞬たじろいだ。

『聞いたらお前もつらくなるかもしれない』
「オリバーみたいに?」

 ドルフが神妙に頷く。アイラは少し考えたが首を振った。

「そこまでつらいことがあったなら、余計聞かなきゃ。私がオリバーのつらさを分けあわなかったら、他に誰がするっていうの」

 涙目でアイラがそう言うと、ドルフとリーフェは顔を見合わせてため息をつく。

『……わかった』

 ドルフは納得し、アイラに昨日の一部始終を伝えた。
 チャドの希望でオリバーが力を貸したこと。増幅した途端に力が一気に広がり、ドルフさえも予想できないほどの被害になってしまったこと。その時、オリバーはオスニエルがいたと思われる建物が崩れたのを見てしまったこと。

「で、でも、ドルフが時間を戻したんでしょ? 被害はないんだよね?」
『ああ。だが、うっかり、オリバーを中心に戻してしまったんだ。だからあいつの記憶にははっきりと残っている。戻したから被害はないと伝えてあるし、オスニエルも無事なはずだ。だが、心がついていかないんだろう』
「もうー。チャド! どうしてそんなこと頼んだのよ!」