8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 チャドは、過度に増幅した力をそのまま放出する。瞬間、地響きがし、オリバーは全身が揺さぶられるような激しい衝撃を感じた。

「うわあっ」
『危ない、オリバー』

 ドルフはすぐにオリバーを背中に乗せ、飛び上がる。ドルフの背中にしがみついたオリバーは、目をふさいだまま、ものすごい破壊音を聞いた。

「え?」
『見るな、オリバー』

 ドルフが止めたが、オリバーは目を開けてしまった。そして、見るに堪えない情景を目にしてしまったのである。

 領主館をはじめとする周辺の建物が崩れ、白い煙を上げている。地面に亀裂が入っているところもあり、鉱山の入り口からは、水が噴き出していた。

「ち、父上?」

 領主館にはオスニエルがいるかもしれないと思い立ったオリバーは、目を疑った。
 しかし領主館は完全につぶれていて、外にいた人間たちは一気に集まってくる。

「嘘だ。どうして。……父上!」
『くっ、なんだこの力は。途中から急に増えた』

 ドルフが悔しそうに言うが、オリバーの頭には入ってこなかった。

「父上、……どうしよう、僕」

 崩れ落ちた建物から、多くの人々が逃げ出してきた。火災が発生したようで、焦げ臭いにおいが漂ってきた。けが人も多く出ているようで、暗闇の中、助けを呼ぶ怒号が飛び交う。

「う、うわあああっ」

 オリバーは頭がパニックになった。
 目の前で起こっている出来事が、現実のものとは思えない。だけど、全身に震えが走るような空気の振動が嘘ではないと伝えている。

「王、早く、王を救出するのだ」

聞こえてくる声から、オスニエルに何か危機が迫ったのだとわかる。

「どうしよう、ドルフ、下ろして。父上を助けなきゃ」

 オリバーが興奮し、ドルフの背中で暴れる。

『危ない、じっとしていろ』
「いや、いやだぁっ」

 興奮したオリバーはそのままドルフの背中から落ちてしまう。
 頭が真っ白になり、死の恐怖を間近に感じたその時、あたりが真っ白になる。