ドルフの声に力を抜く。オリバーは、気だるさを感じた。運動した後の疲れとは種類が違い、体の中心部から体力を搾り取られたような感じだ。
「結構疲れるね」
『暴走しないで済むから、少し疲れているくらいの方がいい。どうだチャド。増幅できるのはこの程度だ。これでもいいのか?』
『そうだな。鉱山の穴が崩れて防げれば十分だ』
小さな体を折り曲げて頷くチャドを、オリバーは手に乗せた。
「じゃあ行こうか。チャド」
『うむ』
オリバーとチャドは再びドルフに乗せてもらい、飛び立った。
やがてベンソン伯爵領に入る。空から眺めていると、まだ明かりのついた建物があった。
「大きな建物だね」
『あれがベンソン伯爵の屋敷だ』
鉱山から、それほど離れていない場所に町がある。大きな建物は領主館だろう。
「意外と近いんだ」
『オスニエルも領主館に滞在しているんじゃないのか?』
視察中の王の滞在場所とすれば、伯爵邸が一番ふさわしい。
「見つかったら怒られるね」
『移動中は時間を止めているから大丈夫だ。それに、お前が夜の散歩にでていることくらい、オスニエルもフィオナも知っているぞ』
「えっ、そうなの?」
『部屋に石があれだけ増えていれば、誰だってわかるだろう。俺が一緒だから黙認されているだけだ』
実際には、ドルフはフィオナには怒られているわけだが、それは内緒だ。
「そっか、知られてたんだ……」
オリバーは恥ずかしそうに頭をかいた。
『それよりチャド、どのあたりに下りればいい』
『そのへんでいい』
チャドが指した場所は、オリバーとドルフが以前も来て石を拾った場所だ。チャドが倒れていた場所とは少しずれているし、鉱山とも少し距離がある。
「ここでいいの?」
『ああ』



