8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3


 ドルフの声に力を抜く。オリバーは、気だるさを感じた。運動した後の疲れとは種類が違い、体の中心部から体力を搾り取られたような感じだ。

「結構疲れるね」
『暴走しないで済むから、少し疲れているくらいの方がいい。どうだチャド。増幅できるのはこの程度だ。これでもいいのか?』
『そうだな。鉱山の穴が崩れて防げれば十分だ』

 小さな体を折り曲げて頷くチャドを、オリバーは手に乗せた。

「じゃあ行こうか。チャド」
『うむ』

 オリバーとチャドは再びドルフに乗せてもらい、飛び立った。

 やがてベンソン伯爵領に入る。空から眺めていると、まだ明かりのついた建物があった。

「大きな建物だね」
『あれがベンソン伯爵の屋敷だ』

 鉱山から、それほど離れていない場所に町がある。大きな建物は領主館だろう。

「意外と近いんだ」
『オスニエルも領主館に滞在しているんじゃないのか?』

 視察中の王の滞在場所とすれば、伯爵邸が一番ふさわしい。

「見つかったら怒られるね」
『移動中は時間を止めているから大丈夫だ。それに、お前が夜の散歩にでていることくらい、オスニエルもフィオナも知っているぞ』
「えっ、そうなの?」
『部屋に石があれだけ増えていれば、誰だってわかるだろう。俺が一緒だから黙認されているだけだ』

 実際には、ドルフはフィオナには怒られているわけだが、それは内緒だ。

「そっか、知られてたんだ……」

 オリバーは恥ずかしそうに頭をかいた。

『それよりチャド、どのあたりに下りればいい』
『そのへんでいい』

 チャドが指した場所は、オリバーとドルフが以前も来て石を拾った場所だ。チャドが倒れていた場所とは少しずれているし、鉱山とも少し距離がある。

「ここでいいの?」
『ああ』