8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3


 心を決めて、部屋に戻ったオリバーは、ドルフを交えて話をした。

『つまり、お前はチャドの力になってやりたいと、言うんだな?』
「うん」
『で、チャド。お前はあの土地の採掘を止めたいと』
『そうだ』

 ドルフを前に、チャドとオリバーがかしこまって座っているという状況だ。
 ドルフは少し不満そうだ。室内をとことこ歩いた後、ぽつりと告げる。

『……まあ、チャドの力は本当に微弱だから、そこまで大事にはならないと思うが。採掘を止めるにはもうちょっとやり方があるだろう。もう一度調査をするよう、進言してみるとかだな』
「そうだよね……」
『頼む。我はこれ以上、あの土地を荒らされるのはまっぴらだ。平和に暮らしていたのに、勝手に掘り起こしているのは人間の方だ。どうして我らの住処が荒らされなければならないのだ』

 チャドの言い分にも一理ある。人間は文化を持ち、まるでこの世界を統べているかのようにふるまっているが、この大地に暮らしているのは、人間だけではない。

「一度、チャドの気が済むようにさせてあげたい。それでもだめなら、今度は僕が、父上に話してみるよ。うまく説得できるかはわからないけど」

 オリバーの主張に、ドルフもついに引き下がった。

『いいだろう。ただ、一度狭い範囲で試してみることだな。オリバーも増幅能力を使いこなせているわけではないだろう?』
「うん」
『うむ』
『城では問題だから、移動しよう』

 チャドはオリバーの肩に乗り、オリバーはそのままドルフに乗った。
 ドルフは時を止め、近くの人がいない台地へと移動する。

『ここならいいだろう。チャド、オリバー、試してみろ』

 オリバーはチャドを見る。
 小さなネズミは地面に降り立ち、目を閉じてひげをピクピクと動かす。すぐに微弱な揺れを感じた。

「わっ、揺れた」
『オリバー、チャドの力を増幅してみろ』
「う、うん」

 意識して増幅能力を使うのは初めてだ。オリバーは呼吸を整えてそっとチャドの体を触る。

「わっ」

 途端に、揺れが強くなる。立っているのが不安になるくらいだが、立っていられないわけでもない。

『よし、止めろ』