心を決めて、部屋に戻ったオリバーは、ドルフを交えて話をした。
『つまり、お前はチャドの力になってやりたいと、言うんだな?』
「うん」
『で、チャド。お前はあの土地の採掘を止めたいと』
『そうだ』
ドルフを前に、チャドとオリバーがかしこまって座っているという状況だ。
ドルフは少し不満そうだ。室内をとことこ歩いた後、ぽつりと告げる。
『……まあ、チャドの力は本当に微弱だから、そこまで大事にはならないと思うが。採掘を止めるにはもうちょっとやり方があるだろう。もう一度調査をするよう、進言してみるとかだな』
「そうだよね……」
『頼む。我はこれ以上、あの土地を荒らされるのはまっぴらだ。平和に暮らしていたのに、勝手に掘り起こしているのは人間の方だ。どうして我らの住処が荒らされなければならないのだ』
チャドの言い分にも一理ある。人間は文化を持ち、まるでこの世界を統べているかのようにふるまっているが、この大地に暮らしているのは、人間だけではない。
「一度、チャドの気が済むようにさせてあげたい。それでもだめなら、今度は僕が、父上に話してみるよ。うまく説得できるかはわからないけど」
オリバーの主張に、ドルフもついに引き下がった。
『いいだろう。ただ、一度狭い範囲で試してみることだな。オリバーも増幅能力を使いこなせているわけではないだろう?』
「うん」
『うむ』
『城では問題だから、移動しよう』
チャドはオリバーの肩に乗り、オリバーはそのままドルフに乗った。
ドルフは時を止め、近くの人がいない台地へと移動する。
『ここならいいだろう。チャド、オリバー、試してみろ』
オリバーはチャドを見る。
小さなネズミは地面に降り立ち、目を閉じてひげをピクピクと動かす。すぐに微弱な揺れを感じた。
「わっ、揺れた」
『オリバー、チャドの力を増幅してみろ』
「う、うん」
意識して増幅能力を使うのは初めてだ。オリバーは呼吸を整えてそっとチャドの体を触る。
「わっ」
途端に、揺れが強くなる。立っているのが不安になるくらいだが、立っていられないわけでもない。
『よし、止めろ』



