「カイ、いつもの僕ってどんなの?」
「……そうですね。自分のやるべきことを愚直に見つめているって感じでしょうか」
「──っ」
カイからの返事は、オリバーは意外だった。
周囲のオリバーの評価は、物静か、真面目、運動が得意くらいなものだ。
「あれ? 俺、変なこと言いました? あ、愚直は失礼か。すんません」
「……いいよ。全然、失礼なんかじゃない」
オリバーは肩の力が少しだけ抜けたような気がした。
「カイ、これから言うこと、誰にも言わないでくれる?」
「いいですけど。どうしたんです」
「僕、……僕さ、本当に王になれるのかな」
「……怖気づいてるんですか?」
あまりにもあっけらかんと聞かれて、戸惑いつつも頷く。弱音を言ったら、叱られるかと思っていたので、カイの反応は意外だ。
「俺は三男なので、家を継ぐ覚悟とかそういうものはわからないんですけど、悩んでいる時点で、オリバー様には王位を受け継ぐ覚悟はあるんだと思うのですよ」
「覚悟?」
「ええ。だって俺、考えたこともないですしね」
「それは、カイがその立場にいないからでしょう?」
まあそうですが、と前置きし、カイはからりと笑った。
「オリバー様、まだ十歳でしょう? その年の頃なんて、なんにも考えていませんでしたよ、俺」
あまりにあっけからかんと言うカイに、オリバーは心配になって来た。大丈夫だろうか。これでも二児の父だというのに。
「僕は、生まれたときから王子だし、世継ぎだからとアイラよりも多くのことを教えてもらっている。なのに、アイラみたいに誰からも好かれる人間にはなれないんだ」
吐き出すと、カイは変な顔をした。



