「リーフェも、クラスのみんなも、明るくて元気なアイラのことが好きでしょう? ……僕よりも」
「オリバー?」
「僕は話すのは得意じゃないし、みんなを笑わせることもできない。アイラの方がたくさんの人に愛されて、期待されて」
自分の言葉で、胸がかきむしられる。目の前のアイラが、見るからに傷ついていくのが悲しいのに、どこかで優越を感じているのも分かった。
──自分の言葉で、傷ついてくれるくらい、アイラが自分を好いていてくれる。
感じる暗い喜びに、オリバーは焦る。
こんな感情、持ってはならない。アイラに嫉妬し、アイラに甘えている。そう思うのに、止めることができない。
「……僕は、僕よりアイラが王に向いていると思う。きっと父上だって、そう思っているはずだよ」
ずっと思っていたことだ。だけど、それを口にして、オリバーの胸に残ったのは、居心地の悪い気分だった。
目の前のアイラは震えながら、目に涙をためていた。
「ど、どうしてそんなこと言うの。オリバーはすごいじゃない。足も速いし、剣術だって頑張ってる。お父様だって、オリバーに期待しているじゃない。オリバーのこと、みんな好きだよ。なんでわからないの?」
「違うよ。みんな僕よりアイラの方が」
「何にもわかっていないの、オリバーの方だよ!」
アイラはそのあたりに落ちていたクッションを掴むと、オリバーに投げつけ、泣きながら部屋を出て行った。
残されたオリバーは、いたたまれない気持ちで胸が苦しい。けれども、どうすることもできずにその場に座り込む。
『オリバー?』
チャドが肩に乗ってきて、オリバーの頬を心配そうに舐めた。



