アイラはじっとオリバーを見つめてくる。やましいことがあるので、オリバーは、思わず目をそらしてしまう。
「オリバー、私には言いたくないの?」
「アイラ、違う。その」
「私のこと嫌いなの? だから私に隠すの?」
アイラの声が潤んでくる。オリバーは困ってしまう。アイラを泣かせて平気でいられるほど神経は太くない。
「違うんだよ。アイラ。その、……ああ、もう、入って」
オリバーはアイラを中に引き入れる。新たなる人物の登場に、チャドは一瞬たじろぎ、寝床の後ろに隠れた。
「チュウ!」
「え? 生き物?」
アイラはすぐに駆け寄り、逃げようとするチャドを掴んでしまった。チャドが足をバタバタとさせている。
「オリバー、なにこれ、聖獣?」
人ならざるものを感知する能力は、アイラの方が長けている。アイラは迷いもなくそう言い、ネズミをのぞき込んだ。
チャドは、アイラのにおいを嗅ぎ、しかしながらそれ以上の興味を示さず、寝床でゴロゴロと転がった。
「かわいいー。どうしたの? どこから拾ってきたの?」
見つかってしまってはもう言い逃れもできない。オリバーは諦めて、チャドを見つけた経緯を説明した。
「この間、地盤沈下の場所を見に行ったときに、見つけた」
「どうして教えてくれなかったの?」
率直に尋ねるアイラに、オリバーはどう伝えようか迷う。
チャドまでアイラに取られたら……なんて不安を持っていることを、アイラに知られたくない。だけど、アイラのピンクがかった灰色の瞳がまっすぐのぞき込んでくると、嘘もつけない。
オリバーは目を泳がせたまま、歯切れ悪く理由を語った。
「……アイラに見せたら、チャド……このネズミも、アイラに夢中になるんじゃないかと思ったんだ」
「オリバー?」
ひとつ吐き出してしまうと、口からどんどん滑り落ちていく。オリバーは内心焦りながら、でもどこで止めたらいいのかわからなくなっていた。



