8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 フィオナが笑うと、アイラは少し照れたように、自分の髪をくるくると指に巻き付けた。

「……ねぇ、お母様はお父様と喧嘩したことある?」
「あるわよ。たーくさん」
「そうなの? じゃあ、そんな時、どうやって仲直りするの?」

 突然、がばっと顔を上げたアイラに、フィオナは苦笑する。

「なあに? オリバーと喧嘩でもした?」
「喧嘩はしてない。ただ、……なんかこう、もやもやするっていうか」
「もやもや?」
「……オリバー、私に内緒にしていることがあるみたいなんだもん」

 アイラは顔を伏せ、ソファからはみ出した足をプラプラとさせる。

「内緒にしているなんて、どうしてわかるの?」
「わかるよ! 私、オリバーのことならなんだってわかるもん。双子なんだから」
「そうかしら」

 思いがけないところを否定されて、アイラは言葉を失った。

「え、だって。そうだよね。私とオリバー、ずっと一緒にいるんだし」
「双子でも別の人間だもの。全部わかることなんてないんじゃないかしら」
「……でも、でも」

 反論しようとするけれど、フィオナの言っていることが正しいと言うこともアイラはわかっていた。

 オリバーのことはよく知っている。だけど、何を考えているかは最近わからない。オリバーは自分の気持ちをあまり口にしないから。

 他にも、オリバーのわからないところがある。
 アイラはオリバーが優しいことを知っている。だからそれを学校のみんなにも知ってもらいたい。だけど、オリバーは人目につかないようにばかりしているのだ。
 オリバーがしていることをみんなが知ったら、誰だってオリバーが好きになるのに違いないのに。

(……オリバーは、みんなに知られたくないのかな)

 アイラはもどかしく感じる。どうしてオリバーは、自分をアピールしようとしないのだろう。