8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 アイラはショックだった。オリバーとは双子として生まれ、ずっと一緒に育ってきた。おしゃべりが得意なアイラと運動が得意なオリバーは性別が違うこともあって、比べられることも少なく、特に喧嘩もせずに大きくなった。

 だからアイラは、オリバーのことが大好きだ。誰より理解していると思っていたし、相手もそうだと思っていたのだ。

(うそ、うそ、うそ。どうして? 私はオリバーになんでも話していたのに)

 戸惑っているアイラに、さらに続けられたひと言が追い打ちをかけた。

「アイラに見せちゃうと、……みんな、アイラの方を好きになるから」

(なに……それ)

 オリバーの声は、沈んでいた。それが、アイラの胸をぎゅっと締め付ける。
 アイラは、見てはいけないものを見てしまった気がして、おずおずと後ろに下がって駆け出した。

 ショックを受けたアイラは、一度は自分の部屋に戻った。しかし、どう頑張っても気持ちが落ち着かない。こんな日に限ってリーフェの姿も見えないのだ。

(ああもう、もやもやする!)

 ひとりでいたくなくて、結局、アイラはフィオナのところにやって来た。

「お母様、お膝にのせて」

 しかしフィオナのお腹は大きく、アイラが乗れるだけのスペースはない。仕方なく、ソファに横になって、膝小僧のあたりにちょこんと頭を乗せた。

「アイラ、どうしたの」

 フィオナは甘えてくるアイラの髪を撫でる。アイラは「んー」と生返事をするだけだ。
 アイラには珍しい様子に、フィオナは長期戦を覚悟して、彼女の髪を撫で続ける。

「学校で何かあった?」
「ううん」
「じゃあ、お腹がすいた?」
「もうっ、どうしてそうなるの!」
「だって、アイラがおしゃべりしないなんて珍しいもの。心配にもなるわ」