8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました～お飾り側妃なのでどうぞお構いなく～3

「あ、オリバー様！　帰らないの？」

　元気に手を振ってくるのはレナルドだ。

「うん。まだちょっとやることがあるから」
「そうなんだ。この後、うちでエヴァンと一緒に課題をやることになったんだけど、オリバー様もこない？」
「ごめん。剣術の時間もあるからちょっと無理かな」
「ちぇ、残念」

　言っているうちにエヴァンの家の馬車が来た。

「じゃあ、一度家に帰ってからまた行くよ、レナルド」
「ああ。またな」
「オリバー様も、また明日」
「うん」

　エヴァンが馬車に乗り込むと、すぐ後ろからレナルドの家の馬車が入ってくる。

「じゃあ俺も行こう。オリバー様、またね！」
「じゃあね。レナルド」

　ふたりを見送って、オリバーはひそかにため息をつく。
　エヴァンは王家の親戚筋で、オスニエルの従弟の子になる。そのため学校に入学するまでは、オリバーとの方がよく顔を合わせていた。

　しかし今や、仲がいいのはレナルドの方だ。
　レナルドは気さくな性質で、身分を気にせず接してきてくれる。エヴァンとレナルドはすぐに意気投合し、今や名前で呼び合うような関係だ。オリバーも普通に仲はいいが、彼らがオリバーを敬称抜きで呼ぶことはない。

　とはいえ、ふたりはオリバーを仲間はずれにするわけではない。学校にいる時はたいてい一緒にいるし、休日には一緒に遊んだりもする。ただ、オリバーは、明確に引かれている一線があるような気がして、少しばかり気後れしてしまうのだ。

　オリバーは、自分が本当に他人から好かれているのか、今ひとつ自身が持てずにいる。
　自分の周囲に人が集まってくるのは、王太子という立場のせいかもしれないし、アイラが隣にいるからかもしれない。そうでなければ、社交的でない自分のそばにいて、楽しいはずがないと思ってしまうのだ。

　その後、ブラウニング侯爵家とファウラー伯爵家の馬車に、令嬢たちは少し遅れてくるという旨を伝え、その場から離れる。