* * *

 それから、八年の時が過ぎる。
 十八歳のオリバーは、大学に通う傍ら、執務の手伝いもするようになった。

「まあでも学生だ。無理はしなくていい」
「大丈夫です。事務仕事は父上より向いている気もしますし」
「それ、正解ですよー、オリバー様!」

 オリバーの返答にロジャーが元気よく答える。憮然とするのはオスニエルだ。

「まあ、認めるがな。であれば、俺の決済が必要だと思うものとそうでないものを分けておけ。少し散歩をしてくる」

 オスニエルは立ち上がり、ひらひらと手を振って出て行ってしまう。

「あ、オスニエル様! まったく、オリバー様に任せて消えるって……」
「ロジャー勘弁してあげてよ。父上はこの八年、鉄道事業の再計画や、新しいエネルギー資源の開発で、精神的には休まることもなかったんだから」
「まあ。実際ご立派でしたけれどね。これまで推進してきた事業の見直しなんてと貴族たちの反感を受けながら、研究者を叱咤して何とかここまで来ましたもんね」

 オスニエルは、ベンソン伯爵の件があってから、採掘場の見直しを行った。地盤調査を行い、ベンソン伯爵領のように、地盤沈下の危険性があるところは閉山の方向へと向けた。
 鉄の算出は減り、鉄道整備計画は全体的に遅れた。

 その批判をひとりで引き受けながら、オスニエルはオリバーに約束した通り、代わりに得たチャドの力が詰まった石のエネルギーを使い、暮らしを便利にしていった。
 その期間に、研究者には鉄の代替品となる軽金属を開発させたのだ。